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かささぎの わたせる橋に おく霜の しろきを見れば 夜ぞふけにける(中納言家持)

【主婦と兼業】 第2回
こんばんは。
以下、【主婦と兼業】第二回目。今橋愛さんが百人一首の家持の歌について書いています。
今橋さんの文章を読んでいると、いつの間にか古典和歌の言葉が私にとても親しいものに感じられる。
どうしてこんなふうに書けるんだろう。
そして、最後には今橋さんの新しい歌の世界に連れていかれる。ぜひお読みください。(花山)

かささぎの わたせる橋に おく霜の
しろきを見れば 夜ぞふけにける      中納言家持

歌意 かささぎが翼をつらねて渡したという橋ー宮中の御階(みはし)におりている霜が白いのを見ると、
もう夜もふけてしまったのだった。    〔所載歌集 新古今集 冬〕『原色小倉百人一首』文英堂より

さいしょ歌だけをぱっと見ると、意味がわからないまま、わからなくてもなんとなく良いかんじがして、そのままもっと知りたくなって、解説を読みはじめると、七夕(たなばた)の伝説。え、それやのに霜、て?  え、何。どうゆうこと?と混乱して、意味がわからなくなって、混乱が止まらず。最後には、いつも、ちょっといやになってしまう歌。
それを、歌人・高島裕(たかしま ゆたか)は、
『だが、この歌の、言葉の連なりそのものの美しさに立ち返ったとき、歌意の如何にかかわらず、不思議に納得させられてしまう。それは主調がa音からO音へとなだらかに移ってゆく音の連なりが、翼を大きくひろげて天空を行く異国の鳥が現われ、やがて遠ざかってゆく(あるいは翼を収めて地に降り立つ)イメージに、自然に合致するからだろう。やはり、歌は調べである。』 (トリビュート百人一首)

とお書きになっていて、ああ、やっぱりすごい人だ。高島さん。とわたしは、ちょっと感動するのだった。
歌意の如何にかかわらず、でいいんやね。音の連なりが、そうなんです、たしかにうつくしいのです。それだけで、いいんやね。正確な意味を追うことばっかりに わたしは気をとられてしまってね。 
作者の大伴家持は、歌人・大伴旅人(ルビ おおとものたびと)を父に持ち、
歌人・大伴坂上郎女(ルビ おおともの さかのうえのいらつめ)に育てられ。編纂に たずさわったとされる『万葉集』には、この人の歌が 479首も(!)入っていて、だんとつのトップ。 
ここだけを聞くと、それはそれは華やか。なのだけれども。
歌人であり政治家でもあった彼は、激しい勢力争いに巻き込まれて、波乱万乗の人生を送るのだった。
すきな歌がある。

新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事(よごと)           (巻20、4516)

『年改まった日に降り続ける真っ白な雪。その清らかな雪が降り続くやうに、
人々に、この国に、どうか吉き事が続きますように (『廃墟からの祈り』高島裕より)

また、高島さんになってしまうけれど、『廃墟からの祈り』という本で、はじめてこの歌を知ってから きれいな景、とてもきれいなこころの歌だなあと 強くひかれた。いやしけ吉事(ルビ よごと、 良い事の意味)。美しい祈りの歌。
この歌で、『万葉集』全20巻は、幕を閉じている。
そして彼は、42歳のときの この歌以後、死ぬるまで 一首も歌を残さなかった。

冴えきっていたのです 
あの冬の星
ひえるゆび、ひざ 
頰と たましい      今橋 愛
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